人間と違い、牛には第1~4胃までの4つの胃が存在します。しかし、全部が胃の働きをしているか・・・といわれると、そうではありません。じゃあ、何で4つも胃があるの?と謎は深まるばかり。ここでは、そんな牛の胃に迫ってみようと思います。


牛の胃とは

牛の胃は「複胃」といい、4つの胃から成り立っています。第1~4胃まであり、そのうち人間の胃と同じような役割をしているのは第4胃のみ。第1~3胃に関しては、一度食べた草を反芻(はんすう)するための機能となっています。ちなみに、一番大きな胃(第1胃)の容積は約100リットル・・・ちょっとした貯蔵庫といっても過言ではないでしょう。この中にいる微生物が分解した草の成分は、牛の大切な栄養源となっています。


「牛の胃」のいろいろ

ここでは、牛の第1~4胃までをじっくり見ていこうと思います。それぞれのしくみや特徴など、知って得する情報が満載ですよ! また、それぞれの調理法なども紹介していきます。それでは、さっそく4つの胃を見てみましょう。


牛の胃【ミノ】


牛の第1胃(ルーメン)は、植物の繊維を分解する役割があります。肉厚で純白に近い色(白色)が特徴で、切り開いた形が蓑傘に似ていることから「ミノ」と呼ばれています。独特の臭みがあり、下処理(水洗いなど)をしないと食べることが出来ません。淡白な味わいとして知られる反面、非常に固い部位でもあります。従って、包丁で切り込みを入れてあることも多いでしょう。代表的な料理としては、焼肉や刺身などがあげられます。


牛の胃【ハチノス】


牛の第2胃(蜂の巣胃)には、エサを食道まで押し戻す・・・という大切な役割があります。名前のとおり、形状が「蜂の巣」に似ていることから名付けられました。ミノ同様、独特の臭みがあるので下処理は欠かせません。生のままでは臭気が強く、かつ固いのでボイルしたものを料理に使います。中国やイタリアをはじめ、日本でもさまざまな料理(焼肉やユッケ、炒め物など)に使われています。


牛の胃【センマイ】


牛の第3胃(葉胃)には、第4胃に入るものの量を調整する役割があります。水と栄養物を吸収するとともに、大きなエサをより分けて第1~2胃へと反芻する機能もあるとか。センマイという言葉は、内壁(ボツボツ状の襞)を現した「千葉(チョニョブ)」という朝鮮語が語源となっています。コリコリとした食感と臭みのなさが特徴・・・とは言え、発酵物が通る胃袋のためやはり下ごしらえは欠かせません。焼肉や刺身といった料理で食べられます。


第4胃【ギアラ】


牛の第4胃(アボマズム)では胃液の分泌が見られ、人間の消化器と同じ役割があるとされています。赤みがかった色と程よい脂肪、濃厚な味わいが特徴といえるでしょう。焼肉はもちろん、煮込み料理などでも使われています。「アボミ」という別名がある一方、ギアラの語源にもさまざまな諸説があります。最も有力なのは、終戦後に基地で働いていた人が報酬の代わりにホルモンをもらった・・・いわゆる「報酬=ギャラ」が訛ってギアラになったという説です。


 



牛肉料理~牛の胃編~

ここでは、レシピというよりも「下処理の方法」を紹介しましょう。牛の胃には独特の臭みがあります・・・が、きちんと下処理することでだいぶ軽減されますよ!牛の胃を美味しく食べるためにも、下処理は欠かせません。ここでは、ハチノスを使って下処理法を紹介していきます。


ハチノスの下処理法

1. ハチノスの表面をしっかり洗浄する。


2. 一度茹でて、表面の黒皮を取り除く。


3. 独特の臭みを消すため、香草などと一緒に長時間茹でる。


4. 茹で上がったら湯を捨て、もう一度水洗いする。


 



牛の胃に隠された真実

牛はキラキラ光るものが大好きで、それらを見つけると「自分のものだ!」とばかりに飲み込んでしまう性質の持ち主。よって、エサである草を食べると同時に(地面に落ちている)釘や鉄片などもドンドン飲み込んでしまいます。それらは牛の胃を傷つけてしまう・・・ということで考案されたのが、磁石を飲み込ませることでした。特殊なパイプ(長さ約6cm)の磁石を牛の第2胃に挿入することで、さまざまな金属を集める仕組みになっています。話しで聞く分にはちょっと痛々しい・・・ものの、牛の胃を金属から守るには最良の手段なのです。


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